『Paint it, SKY』OL

好評により配信期間が12日まで延長された『Paint it, SKY』オンラインライブ。
9日には天さん御本人も交えた『同時試聴会』が予定されており、またファンとの交流の場を設けてくださったことに、心より感謝申し上げたい。


ところで、私は「生バンド至上主義」ではない。
今までこのことを口にしたことはなかったと思うが、TCSでの「生バンドライブ」の第一報が出た時も、実を言えばちょっと複雑な心持ちだった。
しかし推しの挑戦は全力で受け止めたいと思ったから口にはしなかった。

結果から言えば、生バンドライブの『The Clearest SKY』は大成功だった。
私の人生史上、最も楽しい二日間だったと言っても過言ではないくらいだ。


TOS千秋楽以上のライブ――。
ファンでありながら、どうしてもそんなライブを思い描けなかった私が、あの日得た感動は間違いなく「生バンド」への挑戦があったからだ。
それを否定する材料はどこにも見当たらない。素晴らしいライブになった。

ただし、ただしだ。
もちろん初めての挑戦だったということもあるのだろうが、初日の演出や音響回りは必ずしも成功してはいなかったという印象は拭えない。


なぜなら、楽器の音響が大きすぎて、天さんの声量が完全に負けていた。
ライブにおける「主役」は天さんの美声であり、歌唱力であり、表現力だ。
脇を支えるはずの楽器が、メインに来てはならない。と、私は思っている。

その観点から言えば、2日目での修正は見事だった。
少なくとも1日目に感じた懸念は、ほとんど気にならないものになっていた。


あとは「原曲キー問題」である。
こちらは私自身はさほど気にならなかったが、大人気曲「チョ・イ・ス」の原曲キーが下げられた歌唱にはいくつかの意見が飛び交った。

敢えてキーを下げるならば「生バンドに拘らなくとも音源を流しておけばいい」という意見は、まあ分からないでもない。その通りだ。

しかしながら、それら全てを引っ括めて彼女の「挑戦」だと受け止めていたから、私は今日まで口には出さずに見守ることに徹していた。


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ここまでが前日譚である。
さて、本題の『Paint it, SKY』オンラインライブ。
本来開催されるはずだったツアーの代わりに用意された、収録配信ライブ。

収録とは言え、今回もバンド演奏である。「天ちゃんバンド」勢揃いだ。
見せ方に拘った、カジュアルなライブというものが一体どんなものなのか。


「Thumva」という配信媒体の前評判が良くなかったので、あまり期待しないで置こうと思っていたのだが、率直に素晴らしいライブだった。

私は配信ライブに明るくないが、結論から言って、配信ライブとしてできる、ほぼ最高レベルのパフォーマンスだったのではないだろうか?

前評判のように音や映像が止まることもなく、CD音源以上の「ライブ感」溢れる音質・画質による映像をファンに届けてくれたし、天さんが初めてライブで弾き語りをした『奏』は間違いなくファン必見のものだった。


少し話が逸れるが、天さん渾身の3rdアルバム『Paint it, BLUE』について。
基本的に「推し全肯定」の私だけれど、実はそこまで受け止めきれていなかったというか、まあ言ってしまえば「刺さって」いなかった。

それは私が「楽曲はライブを経て完成」するものだと思っているのもあるが、それを差し引いても「今回はちょっと違うな」と感じていた。

「お前の批評なんか知らん」と思われるのがオチなので、楽曲に関するマイナス意見はTwitterでは口にしないが、まあブログなら良いだろう。


とあるフォロワーさんの言葉を借りるなら「一生リピートする」と確信できるくらい好きな曲が、アルバム新曲の中にあるか?という話だ。

1stアルバム『Various BLUE』なら「After the Tears」「RAINBOW」
2ndアルバム『The Only BLUE』なら「Lilas」「GLORIA」が私はそうだ。

完全に私の好みになるが、これらの4曲は雨宮天さんの楽曲の中でもトップレベルに好きな曲で、それが今までアルバム新曲の中にあった。
ところが、今回のアルバムには突出して好きな曲がない。


原点回帰の「アップデート版」という表現が音楽ナタリーのインタビューの中にあったけれど、確かにどの曲もいい曲だ。嫌いではない。
だが過去の曲に「勝っている」とは、私にはあまり思えなかった。

つまり、これは音楽チームが一新されたという天さんの音楽に「私は向いていない」ということを意味している気がした。要は角田プロデューサーよりも前プロデューサーの選曲の方が、現時点では私は好きなのだ。たぶん。


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脱線した話を戻そう。
『PiS』で披露された新曲を、今の私はかなり好きになっている。
元々「いい曲」だったのだ。当たり前である。

だが、今回より重要だったのは「トークコーナー」の存在だった。
ご存知のように「角田プロデューサー」と「天ちゃんバンド」がトークに参加してくださったわけだが、これで私の見方が大いに変化した。


配信ライブならではの砕けたお話を聞けたことで、それぞれの関係性や人柄が垣間見えたし、より親近感が湧いて取っ付きやすくなった。

こんな風に楽しい人たちが集まって、みんなが全力で作ってくれた曲なら、もっと楽しめるしもっと好きになれると、確信することができた。

オンラインライブを経て、ようやく『Paint it, BLUE』を受け止められた。
1ヶ月間感じていた凝りが消えて、今はそんな穏やかな心持ちでいる。


何が言いたいのかというと、有り体に言って、まだ見ていない人はぜひ見てほしい。
一見する価値のある配信ライブだった、ということである。
「Next Dimension」が、「Queen no' cry」が、今の私には物凄く刺さっている。

早く現地で、生バンドの演奏に支えられた天さんの歌声を全身に浴びたい。
「彼女」と「彼女を好きな人たち」と、青い光の中で心を通わせたい。
今の私の願いは、ただそれだけだ。