○○らしさって何だろう

○○らしいよね、という言葉がある。
言った本人はあまり深く考えての発言ではないのかもしれないけれど、私は時たま引っ掛かりを覚えることがある。今日はその話をしたい。


私が応援する声優アーティスト・TrySailを例に挙げる。
ミューレ2期生の同期3人が、何やかんやわちゃわちゃしながら色んな挑戦をしたり、ラジオで話をしたり、楽曲を歌ったりしている。

楽曲で言えば「船」とか「海」に纏わる単語を織り交ぜながら、ファンの背中を押してくれるような応援ソングが中心になっている。

また、3人のソロ活動についても目を向けてみたい。


まずはTrySailの最年長・雨宮天さん
端的に言って、彼女はTrySailの屋台骨、ないし船頭だ。

声優としてもソロアーティストとしてもユニット内の先駆けとなり、精力的に仕事をこなす声優・アーティストのプロフェッショナルである。


当初はユニット活動に消極的であったが、一度やるとなればとことん突き詰め、妥協しない。ライブにおいては誰よりも感情に素直であり、右から左まで縦横無尽に走り回り、全身を使ってファンに想いを届けることでも知られる。

TrySailにリーダーはいないが、戦隊ヒーローで言うところの行動隊長であり、イメージカラーはブルーだけれど、実質的にはレッドの役割が近い。


一方、ソロとしての楽曲は大きく分けて『Skyreach』『Absolute Blue』に代表されるロックテイストのカッコいい曲、『irodori』『エデンの旅人』に代表される歌謡風・エキゾチックな曲の2種類に分類できるように思う。

(そこに『チョ・イ・ス』『Lilas』といった青春バンド系J-POPという一般的なジャンルとしては王道なのに、雨宮天さんの楽曲においては逆説的に「必殺武器」になる楽曲まで持ち合わせているので手が付けられない。)


次にTrySailのお姫様、麻倉ももさん
彼女はTrySailにおける良心、あるいは最後の砦だ。

元来の真面目な性格、そして常に相手の目線に立って考えられる感受性の強さと優しさを持っているが、どこか抜けている愛嬌が最強である。


当初は想いを言葉にするのが苦手な節があったが、場数を踏むことで誰よりも成長著しいお姉さんになったし、実際のところ彼女は雨宮天さんに負けず劣らず「ブレない」。
もちょはもちょ、と表現される所以でもある。

戦隊ヒーローで言うところのThe・ヒロインポジションは不動明王より不動であろう。
イメージカラー通り、ピンクが彼女に相応しいと思う。


ソロとしての楽曲は、『花に赤い糸』『僕だけに見える星』に代表される悲恋寄りの恋愛に端を発するノスタルジックな曲と、『スマッシュ・ドロップ』『Good Job!』に代表されるダンサンブルな応援歌の2種類に大別できそうだ。


最後にTrySailの最年少、夏川椎菜さん
彼女はTrySailのバランサーであり、エンジンでもある。

417Pちゃんねるを始め、自身の楽曲の作詞など自己プロデュース力に長け、作家としてもラジオパーソナリティーとしても買われる芸術家肌だ。


当初は不憫キャラ、そして現在では厄介ポジションに収まるなど、自身のキャラクター性について苦悩し続けている節があったが、ライブにおける煽り役や自身の楽曲の方向性が定まったことで自信をつけ、ファンが増え続けている。

戦隊ヒーローでもイメージカラー通りイエローだが、どちらかと言えば三枚目寄りの男性キャラとしてのイエロー、と表現するべきだろうか。


ソロとしての楽曲は、『パレイド』『アンチテーゼ』に代表される「喜怒哀楽」の一点に絞った感情表現としての曲と、『フワリ、コロリ、カラン、コロン』に代表されるEDMテイストのエロクトリカルな曲が際立っている。


さて、ここまで私なりに3人の「らしさ」を定義づけしてみたわけだが、実を言うと私は「○○らしい」「○○っぽい」と定義づけすることがあまり好きではない。自分で何かの「枠」を決めてしまうことに抵抗があるのだ。

これは私なりの考え方であって、ファン全員に同じことをしろとも、してほしいとも全く思っていない。そこのところは先にお伝えしておきたい。


例えば私は天さんのファンであるが、彼女の活動に望むことはない。もっと正確に言えば「こうしてほしい」という意見はあまり伝えていない。

ニュアンスが難しいのだが、例えば「リサイタル第3回待ってます」「作詞作曲曲第2弾待ってます」「屈服クッキングのこんな料理が見たいです」といった感想を伝えたり、活動における「次」を望むことはある。


ただし「リサイタルじゃなくてライブをしてほしい」「こんなセトリにしてほしい」「思ってた曲と違うからこういう曲を作ってほしい」という意見は伝えないし、そもそもこういった感想を抱くことが私はあまりない。

何というか、1を2にしたり3にしたり10にしたりするのがファンであって、0を1にするのは御本人でありスタッフさんであると思っている。


活動の根っこを決めるのはファンではない気がするのだ、私は。
やりたいことはファンではなく、彼女たちに決めてほしいのだ。

だから、先ほど例に挙げたような意見を仮に伝えるのだとしたら、それは御本人ではなく事務所、もしくは運営側に対して、になるだろう。


誰かを応援していて「思っていたのと違う」と感じるのは、自分でその人を「○○だ」と「定義づけ」してしまっているからなんだと思う。そこで現実と理想にズレが生まれて、離れていってしまうファンもいるのだろう。

それ自体が別に悪いことだとは思わない。人間多かれ少なかれ定義づけしながら生きているし、何かと意味づけしたくなるのはオタクの性質だ。


ただ、自分が応援している人の活動の幅を狭めてしまうのは本意ではないというか、私が目指すファンの姿ではないと思っている、というだけの話だ。

もし定義づけするのであれば、OSではないけれど、きちんとこまめに最新版に「アップデート」していかなければならない。正常に最新版への移行が完了していれば「思っていたのと違う」という感想には至らないように思う。


面倒くさいやつだなぁ、と自分でも思うけど、結局のところ望むべくは、応援している人が笑顔で幸せに活動してくれるのなら、それでいいのだ。

これからも彼女たちの活動を見守り見届け、「想いのアップデート」を重ねていきたい。